青梅商工会議所について

  • 青梅商工会議所公式X
  • 青梅商工会議所公式Facebook
  • 青梅商工会議所公式Youtube

会頭ご挨拶

経済の好循環なくして 持続可能な社会なし

経済の発展なくして社会の繁栄なし

新年のご挨拶

 青梅商工会議所
会頭 中村 洋介
     

 

 新年あけましておめでとうございます。

 今、商工会議所が最も力を注いでいるのが、物価上昇を上回る賃上げの実現です。最新の生鮮食料品を含む物価総合指数は前年同月比で2.9%の上昇でした。これを上回る賃上げを実現することは、我々の生活を守ることであると同時に、もう一つの課題である人手不足に対応するための必要条件でもあります。それでは、物価上昇を上回る賃上げを実現するにはどうすればいいでしょうか。

 それには、まず、物価上昇で上がったコストの価格転嫁が最低条件です。中小企業庁が昨年9月の「価格交渉促進月間」に合わせて調査した結果によると、価格転嫁の実態はサプライチェーンの各段階で違いがあること、公共事業などの入札による取引では価格転嫁が進んでいないことが明らかになりました。まず、サプライチェーンにおいては、1次受の企業の価格転嫁率が5割を超えているのに対し、4次受け以上の企業では、全く転嫁できなかった、または減額された企業が4割近くになるということです。この4次受け以上の企業に発注しているのは、紛れもなく中小企業であり、我々自身もパートナーシップ構築宣言をするなど、価格転嫁を許容する姿勢を示すことが求められるということです。また、公共事業については、入札により価格が決定さているため価格交渉不要との回答が6割を占めています。これは、入札を採用している民間の調達でも同じなのではないでしょうか。これに対しては、入札に最低制限価格を設け、そこに価格転嫁を盛り込むなどの配慮が必要であると考えます。

 しかし、コストの価格転嫁だけでは物価上昇を上回る賃上げは実現できません。それには、付加価値の向上による単価の引き上げが必要になります。と言っても、必ずしも画期的なイノベーションが必要なわけではありません。例えば、飲食店が物価上昇を上回る年率5%の賃上げを実現するにはどうすればいいかというと、まず、物価上昇分の価格転嫁で
1000円のランチを1030円に値上げします。そして2割のお客さんに100円のトッピングを追加してもらえればいいのです。

 付加価値の向上は、消費者が価値に対する対価を適正に支払い、賃上げで生じた余力を消費に還元することで初めて成立します。ただし、これを社会に浸透させるためには起点となる消費が必要です。それは、経済的に余力がある層、インバウンドと輸出、そして外資の直接投資がもたらす消費です。

 まず、既に賃上げが進んだ企業の従業員や余裕資金を有する高齢者など、経済的に余力のある皆さんに、余力の分を既存消費に還元していただくことが必要です。先ほどの飲食店の例で言えば、トッピングを追加していただくということです。もちろん、できることなら、新しい製品やサービスへも積極的に支出いただければ何よりです。

 また、インバウンドが拡大すれば、既存消費の量的拡大につながります。訪日外国人数が3000万人を超え、平均滞在日数も1週間を超えるとなると、0.7%程度の日常消費の増加につながるからです。加えて、価値に見合った価格への見直しも必要です。羽田空港に「ジャパンマスタリーコレクション」という免税店があります。ここでは、全国各地の選りすぐりの商品を、既存の価格に拘らず、外国人が感じる価値に見合った金額に見直して販売しています。それでも、十分な売れ行きを示しているとのことです。身近な例でも、ビールの「バテレ」や沿線まるごとホテルの「さとローグ」など、価値に見合った価格づけをした製品やサービスが好評を博しています。

 そして、それらを輸出することで消費が拡大します。今やネット販売によって輸出のハードルはぐんと下がっています。「うらがギフト」の海外展開だって決して夢ではありません。それには、各事業者が自力で輸出できるよう商工会議所が本気で支援することが必要だと思っています。なぜなら国内流通チャネルの延長上で輸出するようだと、生産者に十分に利益が還元されない可能性があるからです。

 さらに、熊本の「TSMC」のような外資の直接投資は、周辺地域での消費の拡大をもたらします。今、半導体関連と並んで外資の投資が活発なのがAIやDXに欠かせないデータセンターです。首都圏におけるデータセンターの適地が残り少なくなっている中で、外資系データセンターが立地されたことから、多摩西部が注目を集めています。データセンターは収益が設備投資に直結し、固定資産税の収入が大きいというメリットもあります。

 尚、これらの消費を起点として、物価上昇を上回る賃上げが全業種に行き渡り、消費の拡大も進んで、経済の好循環が生まれるまでは、賃上げの遅れた業種への支援も併せて必要です。ここは是非とも行政のお力にお願いしたいところであります。

会頭 中村 洋介

 

新年のご挨拶(2024年1月1日)